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映画喫茶 Bande à part バンドアパート

映画家になるまでの記録。映画、読書、喫茶店。

是枝裕和監督『空気人形』のこと。 ”ぺ・ドゥナ、可愛いのに濡れ場がエロくない。感想と解説”

 かなり良かったので紹介したいと思う。

 是枝裕和監督の作品は幾つか鑑賞したけれど、初めて彼も男で、変態なんだな、と思った。彼の作品の中で濡れ場(?)を観たのも初めてかもしれない。ちなみにこの映画でぺ・ドゥナはヌードも披露するよ。

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 物語は、心を持ってしまった人形・のぞみを中心に据えつつ、どこか心に寂しさを抱えた周辺の人間たちの暮らしにも焦点を当てた、ある意味では群青劇的な作品。

 やっぱり、そういう人々の描き方がかなりうまい。なんなんだろう、置き去りにするようでしっかりと掬い取ってるような。やっぱ好きだなぁ。

 かなり一貫性のあるテーマを設け、是枝監督独特の小さな仕掛けがたくさんある。

『空気人形』のこと

 『誰も知らない』『そして父になる』『海街diary』等で知られる是枝裕和監督。

 作家性あふれる作風で、『誰も知らない』ではカンヌ国際映画祭でも脚光を浴びた。

 『空気人形』の主演を務めるのは、山下敦弘監督作『リンダ リンダ リンダ』にも出演した韓国人女優のぺ・ドゥナ。また、板尾創路ARATA柄本佑も出演。最後にはオダギリジョーも出るよ。

あらすじ

秀雄という中年男性は、ラブドールにのぞみという名前を付け、愛用していたのだが、ともに夜を過ごすうちに彼女に心が芽生えてしまう。

同時に彼女は生命を授かり、外の世界に踏み出すのだが、彼女が街で目にしたのは、こころのどこかに虚しさを抱える人々の姿だった。

感想と解説

 是枝さんの作品の中でも、本作は割と異質で、言いたいこととかストレートに比喩されているような印象。そして様々な人間模様を描くのはやっぱりこの人らしい。

 この作品で初めて是枝さんの変態性を垣間見た気がするな。メイド服やミニスカート履かせて。でも濡れ場とかも、ぺ・ドゥナエロいんだけど全然エロくない。というのも、彼女がもうなんか人形にしか見えなくて。

 いや全然人形じゃないんだけどさ。でも人形なの。よくわからないけど。

 空気人形であるのぞみは、心を持ったことによって初めて外の世界を目にするんだけれど、周りの人間たちはどこか空虚で、その中でも純一という青年に自分と同じ匂いを感じ取り、恋に落ちていく。

 それでも自分は秀雄のもとに帰らなくてはいけない。

 自分はただの性欲処理の道具として代替可能であることを自覚する。自分の中には、空気しかないから。

 でも人間たちだって同じ。みんな人形なんだと、公園で出会った元国語教師の老人に言われる。みんな空気のように同じで、いつしか名前を失ってしまったと。

 彼女はビデオレンタル屋でアルバイトをするんだけど、自分が無力であることに謝ってばかりだ。それは、人間社会の複雑化を如実に表現しているようだ。

 また、かわいい赤ちゃんの手を握って、その子のお母さんにやめてください、と注意されてしまう。なんで怒られるのかわからなかっただろう。世知辛いよね。

 

 だけど、代替可能なのは彼女だけじゃなくて、秀雄だってそう、おまえの替わりは幾らでもいるんだと言われてしまう。社会が複雑になればなるほど、人々は名前を失い、中身は空気で満たされてしまう。

 そして名前のない大人たちが都合よく名前のない子供に圧力をかけ、食い物にしてしまう。

 心とは、即ち命。

 心にお互いに触れ合うことは、生命を愛でること。

 ARATA扮する純一の、素朴で知的な雰囲気がかなり好きだ。彼の物語がもっと見たいと思う。