足が絡まっても、踊り続ける

映画家になるまでの記録。映画、読書、喫茶店。

「あけましておめでとう」と言うのが、恥ずかしかった。

俺は、誰かに「あけましておめでとう」と言うのが、恥ずかしかった。だから、誰にも言わなかった。文字に起こすのも憚られ、「あけましておめでとう」というメールさえ送らなかった。「あけましておめでとう」と誰かに言われても、断固としてそれを使わなかった。

そんなときも、たしか「おめでとう」という5文字でキザったらしく返した覚えがある。

「あけおめ」なんてもっと恥ずかしい。語感が間抜けすぎる。

 

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特に「あけまして」の部分が恥ずかしい。様式美といえばそれまでなのだが、敬体以外の選択肢がないのだ。何となく固く、けれど俗っぽい。

先日まで馬鹿話していた友人に、年が明けた途端、出会うや否や

「えー、その…あけましておめでとうございます」

なーんて少し目をそらして言われた日にはもう敵わず、こちらもちゃんとした返事を返すべきなのだが、なんとなく気恥ずかしい面持ちで「あ、うん、あけましておめでとう…今年もよろしくね、へへっ…」と無難に言わざるを得ない。

第一、そのような状況に追い込む方も追い込む方である。

 

そもそも、「あけまして」なんて言葉を普段は使わないだろう。「~て」という連用句と「おめでとう」という感動詞の組み合わせは、やや不自然なのだ。

(例1)「結婚して、おめでとう」

(例2)「成人して、おめでとう」

何となくおかしい。やはり、形式ばった言い方になってしまう。

 

それでは、例えばなのだが「~て、良かったね」はどうだろうか。

(例3)「夢の中でローラと同じ布団で眠れて、良かったね」

(例4)「初めて彼女と夜を共に過ごした時、アイツの衣服を静かに脱がせたら、背中にタトゥーがビッチリ入っていて、良かったね、アレは」

うん、イイ感じに欲望が溢れ出していて良い。

 

やはり「~て」と「おめでとう」の組み合わせは、固くなりすぎる気がする。にもかかわらず、その言い回しは巷に溢れ、俗っぽさがぬぐえない。

だが、個人的に「おめでとう」は悪くないと考える。やはり、悪いのは「あけまして」、お前だよ。こいつは新年だけでかい顔しやがるんだ。

 

俺と同じような思いを抱いている方がどれだけいるだろうか。みだりに使われ続けていることを鑑みると、あまりいないと思われる。だが一応、解決策を提示しておきたい。

 

正月明け、とあるニュース番組が、天皇陛下による新年のあいさつをとりあげていたのだが、陛下の冒頭のあいさつに目からうろこが落ちた。

陛下が市民に向かって最初に言い放った言葉は

「新年、おめでとうございます」

というものだった。

 

これは衝撃的だった。

新しい年が訪れたことを表現する動詞を使わずして、昨年を無事に過ごせたことで今年も新年を迎えることができました、という祝いの辞を述べるとは。

 

これで来年こそ、ちゃんと挨拶ができそうだ。

 

皆様、遅くなりましたが、新年おめでとうございます。