足が絡まっても、踊り続ける

映画家になるまでの記録。映画、読書、喫茶店。

夢で出会ったあの人にもう一度会いたい

夢を見た。彼女は知らない女の子だった。けれど、それはずっと出会う事を予期していたような、待ち望んでいたような、そんな瞬間だった。人懐っこいような笑顔を浮かべながら、どこか遠くにいるような透明感をまとった彼女と、もしかしたら過去に夢の中で出会っていたのかもしれない。それほど、心地よく、とても懐かしい時間だった。

 

わたし、この子と寝るから。そういった彼女は、スクランブル交差点ですれ違う僕の手を急に引いて彼女の世界に連れ出した。来るでしょ?そう訊ねられた僕は頷くほかなかった。

 

彼女の部屋は殺風景で、和室の真ん中に引いた布団の中には力士の様な大男が裸で寝ていた。彼女の友達の男女二人が何故か僕らの隣に居て、その光景を見てブちぎれていた。ちなみにこの時僕はセーラー服を着て化粧をさせられていた。

 

彼女と裸になり、部屋から出て、コンクリート造りのアパートの踊り場から外を眺めた。これをみせたかったんだろ、と彼女に言うと、満足げな微笑みを返した。灰色に染まった空には、線で紡がれた透明な魚が泳いでいた。

 

彼女はバスタブに一杯になった汚水をしきりにバケツで汲んで、排水溝に流した。私がこうしなくちゃ、誰も幸せになれないでしょ、そういった彼女の横顔は寂しそうだった。

 

不合理で、退廃的で、空は滲んでいる。

それなのにどうしてこんなに、妙にエロティックで、甘美で、切なく物悲しい気持ちになるのか。

 

もしかしたら、これは僕の深層心理の願望を表しているのかもしれない。彼女にもう一度会いたいが、あたりまえのように彼女はこの現実には存在しないし、もっと言えば今日の昼下がり僕が夢に見たあの素晴らしい灰色の世界もまた存在しない。

 

なんて悲しいんだろう。